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取材レポート
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2025/07/02new

【ACSiON/SBI新生銀行】導入企業インタビュー「偽造本人確認書類対策を強化~ACSiON導入の背景と導入効果」

| by:ウェブ管理者


インターネットバンキングなどのオンライン金融サービスの拡大に伴い、偽造された本人確認書類を用いた不正な口座開設の申込みが増加している。特に銀行では、これらの偽造本人確認書類を確実に見分け、不正口座開設を防止することが重要な課題となっている。こうした状況の中、SBI新生銀行は、偽造運転免許証などを高精度で識別する技術を提供するACSiONの『本人確認書類真贋判定 特徴資料』サービスを導入し、対策を強化した。

このサービスは、運転免許証やマイナンバーカード、在留カードにおいて、正規の本人確認書類のフォーマットのルールを網羅的にまとめ提供することで偽造本人確認書類との判断を高い精度で判定することを可能にするものだ。SBI新生銀行は、いち早くこのサービスを導入し、成果を上げている。

今回、同サービスの導入を担当したSBI新生銀行の山本氏に、その背景や効果について詳しく話を伺った。


  高度化する偽造本人確認書類、対応に迫られる銀行

本人確認書類の偽造は今に始まったことではない。しかし近年、その精巧さは格段に向上している。「現物を手にしてもわからないほど精巧なものが出回っている」と山本氏は指摘する。運転免許証の偽造が主流であったが、最近ではマイナンバーカードや保険証、在留カードなど、対象が多様化しているという。

特に運転免許証は47都道府県の公安委員会によってフォーマットが異なり、それらすべてを銀行側で把握することは極めて困難で「一部の担当者がこの地域の免許証は詳しい、といった状況はあっても、全てを網羅的に把握することは到底できない」と山本氏は当時の課題を振り返る。

これまでSBI新生銀行では、偽造と判断した本人確認書類をアルバムのように保管し、調査担当者間で共有していた。しかし、明確な判断基準がないまま偽造を特定することは難しく、担当者によって判断にバラつきが生じることもあった。
「明らかにフォーマットがかけ離れたものであれば把握できる一方、最終的な判断を銀行だけで行うことは難しい部分もあった」と山本氏は説明する。


  ACSiON導入の決め手と期待

ACSiONの『本人確認書類真贋判定 特徴資料』サービスは、SBI新生銀行にとってまさに求めていたものだった。「このサービスについては本件のようなサービスを提供している企業が他にはないと思っていた。銀行がまさに欲しくて手が届かなかったものを、ピンポイントで提案いただけた」と山本氏は評価する。

ACSiONとは以前から様々なサービスで接点があり、SBI新生銀行グループ各社へのサービス提供やコンサルの実績もあった。そのため、社内での導入判断はスムーズだった。「こういうサービスがあるなら入れよう、と速やかに決定した」と山本氏は話す。

懸念点としては、運転免許証のフォーマットが都道府県ごとに予告なく更新される点があった。しかし、「新しいフォーマットを見つけた場合、ACSiONに連携することで速やかに更新いただける。また、ACSiONもフォーマットの変更を確認してくれる」ということで、懸念は解消された。


  導入後の具体的効果と業務改善

ACSiONのサービス導入により、調査担当者が統一された基準で判定できるようになった効果は大きい。「これまでは10人の担当者がいれば10人独自の目線で見ていたが、一定の基準と照らし合わせることで、『この点がおかしいので偽造だと思います』と自信を持って言えるようになった」と山本氏は導入効果を語る。
実際に、偽造と判断できる書類の数は大幅に増加しており、山本氏は次のように数字を示した。

「当行内で偽造と判断しきれなかったものが明確に判断できるようになったものは、3〜4倍になっている」

また、「悩む時間が短くなり、正確な判断が可能になった」と山本氏は評価し、判断時間短縮も実現している一方で、それ以上に正確性の向上効果の方が大きいという。重要な成果として、正規の申込者を誤って断ってしまうケースが減少したことも、そのひとつだという。「以前はフォーマットがおかしいと思われると、基本的には口座開設をお断りすることが多かった。明確な判断基準がない中では、正当なお客様を断ってしまっていたケースも少なからずあったと思う」と山本氏は振り返り、業務面でも大きな変化を感じている。


  今後の展望と業界連携の重要性

金融犯罪対策として、SBI新生銀行は特殊詐欺やSNS型投資詐欺の被害防止に注力している。特に被害を未然に防ぐための取り組みとして、モニタリングのリアルタイム化と自動利用制限化を進めている。「犯罪者が管理する口座に被害者が詐欺被害のお金を振りこんだ場合、入金したタイミングで自動的に口座を凍結できれば、被害者に返金できる。また、当行のお客様が被害に遭うケースでも、不審な口座への送金を止めることで被害を防げる」と山本氏は説明する。

偽造防止技術の業界全体への普及については、「一つの銀行が対策を強化しても、対策できていない銀行が集中的に狙われるだけ」と山本氏は指摘する。そのため、銀行をはじめとする金融機関全体で対策の底上げが必要だと強調する。

現在、金融機関間では定期的に情報交換会が行われており、対策の高度化や情報共有が進められている。山本氏は、ACSiONのサービスを導入する金融機関が増えることで、「ユーザー会」のような形で情報を共有する場ができれば効果的だと提案する。「各社で今のトレンドや各業界での傾向を共有し、たとえばどの地域でどういう偽造が流行っているかを持ち寄って発表できる機会があれば」と期待を語る。

また、「銀行だけでなく、クレジットカード、証券、貸金など、金融機関全体、さらには業界を超えた情報共有」の重要性を強調したうえで、次のように締めくくった。

「犯罪者は一つの偽造本人確認書類を様々な金融サービスで使い回す傾向がある。そのため、業界の垣根を越えた情報共有が極めて重要である。」

金融犯罪対策の最前線で、テクノロジーと情報共有を両輪に、より安全な金融環境の実現を目指すSBI新生銀行。ACSiONとの連携により、その取り組みはさらに強化されている。

(取材、記事、編集・制作 : GoodWayメディアプロモーション事業部 @株式会社グッドウェイ )



18:36 | 取材:金融・IT業界向け
2025/06/13

【グッドウェイ】生成AIと金融DXのリアルと展望を追う「金融AI EXPO2025」を開催!(午後の部)

| by:ウェブ管理者
 
 2025年5月23日(金)、グッドウェイは「金融AI EXPO2025」を東京コンベンションホールにて開催した。

 本記事では、当日午後の特別講演やパネルディスカッション、表彰式を含む一連のセッションの内容を通して、金融業界における最新の取り組みと各社の実践事例をご紹介する。

特別講演 「生成AIが変える金融モダナイゼーション~レガシーからの脱却~」


 
 生成AIの活用が進む一方、金融機関では依然として「レガシーシステム」の課題が大きく立ちはだかっている。本講演では、小倉 哲哉氏( 三菱UFJトラストシステム 取締役 常務執行役員 )と、勝本 秀之氏( Trust CPO Principal Solution Lead(生成AI X レガシー担当))が登壇し、現場でのAI活用と刷新の取り組みが語られた。

 勝本氏は、Trustが開発した「Trust TLanP」というソリューションを紹介。1980年代から使われ続けるメインフレーム系システムを対象に、手書きの仕様書や古いソースコードなどを生成AIで解析し、可読性の高い情報へと変換。仕様書の自動生成や新旧システムの出力比較による検証支援などにより、調査や設計の工程を大幅に効率化できると説明した。

 対談では、小倉氏が三菱UFJトラストシステムの立場から「開発力の強化」を最重要課題に据えている現状を共有。システム開発の多くが新規開発ではなく、既存システムの改修や影響調査であり、コード生成よりも前工程にこそ生成AIの効果が期待できると語った。実際にTrust社の支援を受けながら、仕様解析やドキュメント整備のPoC(実証実験)も進めているという。

 今後については、単なる自動化にとどまらず、開発プロセス全体の再設計やリテラシー向上、そして品質保証の在り方が大きなテーマになると指摘。現場の理解や品質感に配慮しながら、生成AIを導入・活用していく姿勢が、印象的なセッションとなった。

講演 「金融機関のDX推進における生成AIの活用」


 生成AIの進化により、金融機関のDX推進は新たなフェーズを迎えている。本講演では、及川 恵一朗氏( アルテアエンジニアリング 営業本部 金融法人担当セールスマネジャ )と、井口 亮氏( 金融データ活用推進協会(FDUA) 金融業界横断データ連携PFWG WG長、みずほ第一フィナンシャルテクノロジー データアナリティクス技術開発部長 )が登壇し、生成AIを活用したデータ統合や業務高度化の可能性について語られた。

 井口氏は、金融業界におけるデータのサイロ化が大きな課題であると指摘。巨大な中央DBの再構築ではなく、仮想的に連携させる「データメッシュ」的な構想が注目されていると述べた。また、共通の社会課題に対して複数の金融機関が連携する事例や、ガバナンスと柔軟性を両立させる連邦型のデータ統治モデルにも言及した。

 さらに、DXの目的は単なる効率化ではなく、パーソナライズドな顧客提案やオルタナティブデータとの掛け合わせによる新たな収益創出にあるとし、データ活用の広がりがサービス変革にも直結する可能性があると語った。

 生成AIの実装に際しては、ハルシネーション(誤情報生成)のリスクや説明責任への対応も不可欠であり、AIエージェントの導入に向けてはセキュリティやアクセス管理を含む統制設計が求められる。技術と実務をつなぐ実践的な視点が光るセッションとなった。

講演 「生成AIを活用するための基盤づくりとは~もはやAIで稼ぐ時代へ突入~」


 
生成AIをいかに業務に定着させ、収益に結びつけるか。その鍵を握るのが「基盤づくり」だ。本講演では、高坂 亮多氏(セゾンテクノロジー CTO)と盛田 哲夫氏(セゾンテクノロジー プロダクトセールスエンジニアリング部)が登壇し、生成AI活用に必要な基盤設計の考え方と、金融機関における具体的な活用事例を紹介した。

 高坂氏はまず、生成AIを業務に本格適用するためには、単発のPoCにとどまらず「再現性ある運用」が必要だと指摘。導入初期からログ取得やデータの前処理方法を標準化しておくことで、全社展開やコスト配賦に向けた判断をスムーズにし、抵抗感なくガバナンスを利かせていく「シフトレフト」の考え方を紹介した。セゾンテクノロジーでは、自社プロダクト「HULFT Square」を通じて、あらゆる生成AIモデルに共通のAPI経由でアクセスし、プロンプトや利用状況のログを一元管理できる仕組みを整備。用途別の利用実績やプロンプト内容を可視化・分析することで、活用の最適化やFAQの自動更新、ガードレールの運用改善にもつなげているという。

 盛田氏からは、実際の金融機関での導入事例が紹介された。セブン銀行では、構内利用の生成AIプラットフォーム「セブンバンクブレイン」とHULFT Squareを連携させ、自然言語でのデータ分析とグラフ生成を実現。オンプレミスやSaaSなど多様なデータソースをまたいだ連携が可能で、生成AIを安心して活用できる環境づくりに貢献している。また、あるネット銀行では、AML対策や審査業務の効率化を目的に生成AIを導入。書類チェックや画像データの翻訳・構造化を自動化し、業務処理量を飛躍的に拡大させることに成功したという。

パネルディスカッション 「生成AIが拓く未来像~SMBCグループの挑戦と展望~」


 
生成AIの社会実装が本格化する中、SMBCグループをはじめとする官民の先進的なプレイヤーが一堂に会し、実践と展望を語り合ったパネルディスカッション。白石 直樹氏( 三井住友フィナンシャルグループ  デジタルソリューション本部 執行役員 デジタルソリューション本部長)、藤本 昌吾氏( 日本総合研究所 技術統括部長)、大久保 光伸氏( 財務省 デジタル統括責任者補佐官、デジタル庁 ソリューションアーキテクト )を迎え、岡田 拓郎氏( 金融データ活用推進協会(FDUA) 代表理事、金融IT協会(FITA) 副理事長、Trust 代表取締役CEO)のモデレーションのもと、多角的な視点から議論が展開された。

 白石氏は、SMBCグループにおける生成AIの業務適用事例として、社内チャット活用による問い合わせ対応や、デジタル子会社での取組事例を紹介。特に、フル生成AIよりもルールベース技術との組み合わせの方が、精度・コスト両面で効果的だったと語り、実務視点での検証結果に注目が集まった。

 藤本氏からは、日本総研での取り組みとして、社内向けAIチャットボットによる業務効率化、ならびにコード自動生成やレガシー対応のユースケースが紹介された。また、今後に向けてはマルチLLMに対応した開発基盤の整備や、人材育成に向けた社内研修・コミュニティ形成にも注力していると語った。

 官民の橋渡し役として登壇した大久保氏は、生成AIを軸とした行政改革や地方自治体でのユースケース、国主導で進むクラウド基盤整備の現状に触れ、民間連携によるボトムアップ型の変革が重要であると強調。特に、アナログとデジタルの混在がコスト高を招いている現状を指摘し、生成AIを活かした新たな業務構築への期待を述べた。テクノロジーの進展と向き合いながら、柔軟に変化を取り入れる企業文化こそが、次の時代の競争力となる。そんなメッセージがにじむセッションとなった。

講演 「金融業界の革新を加速させるAIエージェントの実装 〜ユニバーサルAIプラットフォームによる、統制とナレッジを兼ね備えた次世代AI実践活用〜
 

 生成AIとAIエージェントの活用が急速に進むなか、金融業界の現場での実装に向けた動きが加速している。本講演では、岩下 優介氏( Dataiku Japan 金融営業部 部長 )・木邑 文彦氏( Dataiku Japan セールスエンジニアリング部 シニアセールスエンジニア )、そして佐藤 竜介氏(東京海上ホールディングス ビジネスデザイン部 マネージャー、金融データ活用推進協会(FDUA) 生成AIWG WG長)が登壇し、「金融業界の革新を加速させるAIエージェントの実装」というテーマで、それぞれの立場から最新の取り組みと課題意識を共有した。

 佐藤氏は冒頭、FDUA(金融データ活用推進協会)において自身が携わる生成AI関連のワーキンググループの活動として、金融機関向けの生成AIガイドラインを策定・公開した経緯を紹介。現場での実務に活かせる形で、ルールやユースケース、リスク評価の枠組みを提示したと述べた。今後の改訂では、AIエージェントに関する運用上のリスクや統制設計に焦点を当てた内容のアップデートを予定しており、とくに自律的に動作するエージェントが互いに影響を与え合うことで起こりうる「エージェントジャック」のような想定外の挙動に対しても、備えが必要であると指摘した。

 続いて岩下氏・木邑氏は、Dataikuが提供するAIプラットフォームの特徴とユースケースを紹介。生成AIや機械学習に加え、AIエージェント機能を統合した同社のソリューションでは、オンプレミス・クラウド・外部APIなど多様な環境と接続し、業務に即したデータ処理や意思決定の支援が可能であるという。デモでは、AML(マネーロンダリング対策)領域における異常検知やレポート作成支援の例が紹介され、複数のエージェントが連携して分析・要約・報告を担う流れが示された。また、従来業務で求められる監査証跡の要件にも配慮されており、エージェント出力のログ活用を通じて透明性を保った運用が可能である点も言及された。

講演 「なぜ社内で生成AI活用が進まないか:AI活用の現在地とこれから
 

 生成AI活用の機運が高まる中でも、現場レベルでの定着には課題が残る。本講演では、長谷川 大地氏( WorkX LeanDataX  ディレクター、金融データ活用推進協会(FDUA) 標準化委員会)と中村 義幸氏( セブン銀行 AI・データ戦略部長、金融データ活用推進協会(FDUA) 理事 標準化委員会 委員長代行)が登壇し、「なぜ社内で生成AI活用が進まないのか」を切り口に、取り組み事例とともに実践的な知見が共有された。

 前半パートに登壇した長谷川氏は、フリーランス人材とAI専門人材を束ねるプラットフォーム運営の視点から、コンプライアンス領域における生成AIの応用可能性を紹介。メールやチャットのやりとりに含まれる個人情報や不適切な表現、談合の兆候などを検出する領域について、生成AIと機械学習を活用した分析の有効性が高いとし、自社でもツールの試作・実装に取り組んでいることが紹介された。また、生成AI活用が進まない主な要因として、技術知識への理解不足、業務変革との接続の難しさ、AIありきのテーマ設定による現場の負担感などを挙げ、トップダウンの号令だけでは定着が難しいと述べた。

 後半では、セブン銀行の中村氏が自社の取り組みを紹介。7年前から始まったAI活用が社内組織へと進化し、2025年4月にはAI・データ戦略部が新設されたという。生成AI活用では、日常業務の効率化から着手し、社内で自前の環境「7Bank-Brain」を構築。プロンプトUIの整備や外部ツール連携により、社員の約6割が毎月利用する体制を実現している。ドキュメント検索や自然言語によるデータ分析機能に加え、「社長AI」と呼ばれるインタビュー学習型の応答システムも開発され、将来的には社員ごとのクローンを通じたAIエージェント活用を構想していると語った。


パネルディスカッション 「金融グループ横断でのSnowflakeデータ活用」


 
金融グループ内外のデータをいかに横断的に活用し、AI活用へとつなげていくか。本セッションでは、西潟 裕介氏( 三菱UFJ信託銀行 デジタル戦略部 DX統括推進室 AI推進グループ 調査役・ジュニアフェロー)、須甲 仁志氏( 三菱UFJアセットマネジメント 運用企画部 運用IT戦略室 室長)、佐藤 市雄氏(SBIホールディングス 社長室ビッグデータ担当 部長 兼 SBI生成AI室長、金融データ活用推進協会(FDUA) 理事 兼 企画出版委員会 委員長)の3名が登壇し、上原 玄之氏(Snowflake インダストリー事業開発本部 金融インダストリー統括部長)のモデレーションのもと、Snowflakeを活用したデータ基盤整備の現場について語り合った。

 佐藤氏は、SBIグループが取り組む「データメッシュ」の構想と実装状況を紹介。2012年からビッグデータ基盤の整備を進め、現在はSnowflakeを中心にグループ会社の異なる環境(クラウド、オンプレミスなど)を横断するデータ連携を推進しているという。各社から収集したデータをホールディングス側で管理・整備し、AIアプリやレポートに活用。最近では、社内外での活用実績をKPIとして可視化し、成果の蓄積によって新たな連携先を自発的に引き込む好循環が生まれていると語った。

 西潟氏は、信託銀行におけるデータサイロの解消と、事業部主導によるデータ利活用基盤の構築を説明。Snowflakeを活用し、アプリケーションの共通利用による環境整備や、非構造データの構造化を進めている。生成AIの登場によって、従来よりも幅広い部門でデータ活用の裾野が広がっており、AIと人の双方が扱える柔軟な基盤づくりが重要だと指摘した。また、データ単体ではなくロジックやアプリケーションを含めた「仕組みごと」の共有により、グループ横断の連携が進みやすくなるという実感も共有された。

 須甲氏は、2024年10月にSnowflakeを導入したばかりの立場から、自社の課題と可能性を語った。資産運用業務において非構造なニュース・決算・レポート等のデータを扱う必要があり、今後はそのデータベース化と活用によって業務の高度化を目指しているという。まずはスプレッドシートやオンプレ環境の情報を集約し、小さなユースケースから順に成果を積み上げていく方針を示した。

金融データ活用組織 「FDUAアワード 2025 表彰式 powered by FDUA


 
金融AI EXPOの締めくくりとして「FDUAアワード2025 表彰式」が開催された。主催は一般社団法人金融データ活用推進協会(FDUA)。本アワードは、データ活用に関する先進的な取り組みを表彰し、業界全体のレベルアップと実践知の共有を目的とした新たな試みである。記念すべき第1回となった今回は、標準化委員会の白石寛樹委員長(三井住友カード)、中村義幸委員長代行(セブン銀行)らの挨拶に続き、三部門での表彰が行われた。



 まず「特別賞」では、プレゼンターとして佐藤 市雄氏(金融データ活用推進協会(FDUA) 理事 兼 企画出版委員会 委員長)が登壇し、データ活用を通じた人材育成や地域貢献の面で顕著な成果を上げた3社が選出された。クレディセゾンは、「現在の新しい世界を、3年後の普通にする」というコンセプトを掲げ、全社横断でのデータ推進を進めている。三井住友ファイナンス&リースは「全社員をDX人材に」というビジョンのもと、伴走型の基盤整備に注力。伊予銀行は、地域企業との予測・伴走モデルを通じて地方経済への還元を目指す姿勢が評価された。



 次に「データ活用賞」では、プレゼンターとして岡田 拓郎氏( 金融データ活用推進協会(FDUA) 代表理事 )が登壇し、データ活用の仕組みと成果を両立させ、業界全体にも波及する実践が評価された。信金中央金庫は、全国254の信用金庫のうち145行が参加する「心筋DB」プロジェクトを通じ、マーケティングや信用スコアリングの高度化を実現。八十二銀行は、3名の素人行員から始まった小規模な取り組みを、地域金融機関のモデルケースへと育て上げた。りそなホールディングスは、AI活用を意識させず業務に浸透させるサービス「データイグニッション」で他行にも知見を還元している。

 総括として、松橋 正明 氏(セブン銀行 代表取締役社長、金融データ活用推進協会(FDUA) 顧問)より、ビデオメッセージにて発表された。


 最後に「大賞」では、プレゼンターとして中島 淳一氏( 金融データ活用推進協会(FDUA) 顧問 )が登壇し、受賞した日本生命保険を表彰した。2019年、5人と小さなチームから始まった取り組みがいまでは多くのメンバーを巻き込み、全社的なデータ活用へと展開している。FDUA加盟後は標準化委員会や生成AI WGでの活動を通じ、知見を社外にも広く共有している。受賞スピーチでは「褒められることの少ないデータ業務がこうして評価されたことが何より嬉しい」と語り、会場には温かな拍手が響いた。

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(取材、撮影、記事、編集・制作 : GoodWayメディアプロモーション事業部 @株式会社グッドウェイ )




09:16 | 取材:金融・IT業界向け
2025/06/13

【グッドウェイ】生成AIと金融DXのリアルと展望を追う「金融AI EXPO2025」を開催!(午前の部)

| by:ウェブ管理者
 
 2025年5月23日(金)、グッドウェイは「金融AI EXPO2025」を東京コンベンションホールにて開催した。本イベントは、金融業界の第一線で活躍する企業・専門家たちが一堂に会し、生成AIやデータ利活用の最新事例や展望を語る場として開かれた。





 開幕の挨拶に立ったのは、岡田 拓郎 氏(金融データ活用推進協会(FDUA) 代表理事、金融IT協会(FITA) 副理事長、Trust 代表取締役CEO)。

 本記事では、当日の基調講演やパネルディスカッション、表彰式を含む一連のセッションの内容を通して、金融業界における最新の取り組みと各社の実践事例をご紹介する。

特別講演 「AIと共に働く時代:チームを拡張するためのAIディスカッションペーパーの活用


 
五十嵐 ほづえ氏(金融庁 総合政策局リスク分析総括課参事官)より、「AIと共に働く時代:チームを拡張するためのAIディスカッションペーパーの活用」と題した講演が行われた。

 金融庁では、AI技術の進展にともない、現場での適切な活用を後押しする目的で、実務的な視点を盛り込んだ「AIディスカッションペーパー(ver.1.0)」を公開。人口減少に直面する日本社会において、AIは人材不足を補う存在として注目される一方、現場では「どう使えばいいかわからない」といった声も多く、実態に即した支援が求められている。

 講演の中核となったのが、ディスカッションペーパーの概要だ。ペーパーでは、AI活用における課題を「従来型と生成AIに共通する課題」「生成AIによって難しくなった課題」「生成AIがもたらした新たな課題」の3つに分類。特にハルシネーションや説明責任の困難さ、外部とのコミュニケーションギャップといった実務上のリアルな課題が取り上げられた。

 さらに、ペーパー作成の基となったアンケート調査等から、実際のユースケースや金融機関の取り組み事例も紹介。「ROI(投資対効果)が見えにくい中でも、KPIを工夫して運用を開始した」「グループ内にCoE(Center of Excellence)を設けて統制を図った」など、試行錯誤しながら実装を進める現場の知見が共有された。

講演 「Power Up Your AI:ニュースと生成AIを活用して競争優位性を獲得


 サチン・B・シン氏(ダウ・ジョーンズ アジア太平洋地域 エンタープライズソリューション責任者)は、「ニュースと生成AIの活用によるリスク予測とビジネス成長の可能性」と題して、同社が世界中のクライアントと共に実証してきたユースケースと仕組みを紹介した。

 ダウ・ジョーンズは、生成AIの世界的な導入が加速する中で、ニュースメディアにおける著作権に関する課題を認識している。こうした状況に対応するため、同社のFactivaでは、生成AI向けに利用可能なコンテンツをまとめたフィードを提供していると説明した。

 このフィードは、生成AIアプリケーションに特化した、グローバルかつ多様なライセンス取得済みニュースデータを取り揃えている。The Wall Street Journal や Barron’s、Financial News、Investors’ Business Daily などの高品質な媒体を多数含み、156カ国‧26言語にわたる網羅的なコンテンツが利用可能となっている。さらに、すべてのコンテンツにはメタデータが付与されており、さまざまなAI活用ユースケースにおいて柔軟かつ効果的に活用できる。

 実際の活用例として、過去10年分のニュースデータを学習させた独自モデルによって、企業の経営危機や破綻を3〜6か月前に予測する仕組みを開発。リスクスコアの“スパイク”が与信格下げや倒産など重大イベントの予兆となっている事例を複数紹介し、実用性とROIの高さを強調した。

 また、営業支援やESG評価、投資判断、業界特化型のインサイト提供など、生成AIとニュースを掛け合わせた多彩な活用事例も紹介。特に「カスタマイズされたニュースレター」「リアルタイムの対話型AIチャットボット」「即時生成の調査レポート」など、業務効率を飛躍的に高める具体的な仕組みが注目を集めた。

講演 「金融機関のAI活用を支える“データ×基盤”の革新力」─SIX × Snowflake対談


 
「金融機関のAI活用を支えるデータ基盤の革新力」と題し、砂川 俊明氏(SIXファイナンシャル インフォメーション ジャパン 日本法人副代表 営業部長)と、三本木 宏氏(Snowflake データクラウドプロダクト ストラテジックスペシャリスト)による対談講演が行われた。

 冒頭では、スイスに本拠を置くSIXグループの事業概要が紹介され、証券取引所の運営や金融情報サービスの提供など、多角的な金融インフラ事業を展開していることが語られた。特に、世界中の金融機関に対するデータ提供の実績が強調された。

 本題となる対談では、まずSnowflakeのデータクラウドの特性が説明された。データのサイロ化や複雑な取り込み手順といった従来の課題を解消し、単一基盤上でセキュアかつ柔軟なデータ共有を実現する仕組みを紹介。また、マーケットプレイス機能により、金融・非金融を問わず多様なデータソースを容易に活用できる点も注目された。

 金融業界における「信頼できるデータ」の重要性や、データ戦略なくしてAI戦略は成立しないという共通認識のもと、両者はデータの民主化とガバナンスの効いたコラボレーションの必要性を強調。SIX側からも、資産運用立国への流れを背景に、グローバルな視点から日本市場の可能性に期待が寄せられた。
 
特別パネル 「保険業界における生成AIの進化と現場変革」



 
生成AIの業務活用が進む中、保険業界でも現場主導の変革が各社で加速している。本パネルでは、品川 輝氏(ニッセイ情報テクノロジー 執行役員 開発技術革新部長 販売チャネルソリューション事業部担当)高橋 直子 氏(アフラック生命保険 AI・データアナリティクス部担当 執行役員)木村 英智 氏(東京海上日動システムズ デジタルイノベーション本部 データ活用部長 シニアスペシャリスト(データサイエンススペシャリスト))の3名が登壇し、山口 省蔵 氏(金融IT協会(FITA) 理事長、熱い金融マン協会 代表)によるモデレーションのもと、生成AIに対する取り組みの全体像と現場の実践について語られた。

 ニッセイ情報テクノロジーの品川輝氏は、システム開発の高度化を軸に、生成AIの活用を段階的に全社へ展開している体制を紹介。先行事業部でのPoC(実証実験)を経て、現在は社内全体でユースケース拡大を目指しているという。社内向けにはドキュメントやソースコードを素早く検索・可視化するアプリケーションを整備し、開発者の支援や設計・影響分析の効率化を実現。また、タグ変換やコード補完を通じてマイグレーション作業の自動化にも挑戦しており、既存システムの省力化にも生成AIを活用している。

 アフラックの高橋直子氏は、「守り」と「攻め」の両面から生成AIの活用を進める態勢を紹介。AIリスク管理態勢を強化し、法務部など関係部署との連携を重視する一方で、営業支援・代理店業務・社内業務の3つの領域にわたってユースケースを展開している。社内では、社員が自由に生成AIを活用できる「Aflac Assist」を提供。営業支社からは、自主的にロールプレイングをプロンプト設計で行うなど、現場発の工夫が広がっており、好事例をコンテスト形式で横展開する取り組みも行われている。

 東京海上日動システムズの木村英智氏は、社内でPoC(実証実験)を進める中で、生成AIの特性を活かすには従来のシステム開発とは異なる考え方が求められると指摘。PoCの段階で手応えがあっても、業務に展開するまでの壁は依然として大きいと語った。また、PoCが一過性に終わらず、社内に継続的な文化として根づくことが重要だと述べ、生成AI活用における風土づくりの必要性を強調した。

ランチョンセッション  ~生成AI時代の人材育成~『金融IT検定 表彰式』 powered by FITA


 「生成AI時代の人材育成」として開催されたセッション内で、「第1回 金融IT検定・初級 表彰式 powered by FITA」が行われた。進行を務めたのは、中山 靖司氏(検定WG長、SBI金融経済研究所 統括主任研究員、SBI大学院大学 客員教授、金融IT協会(FITA) 理事)。プレゼンターとして、山口 省蔵氏(金融IT協会(FITA) 理事長、熱い金融マン協会 代表)が登壇した。

 表彰式に先立ち、中山氏より金融IT検定の趣旨と仕組みについて紹介がなされた。金融業界におけるITリテラシーの底上げを目的とし、「金融×IT×ビジネス」を横断的に理解する人材の育成を目指すこの検定は、2024年9月に初回が実施されたばかり。対象者は金融機関の営業・事務・IT部門から、金融系システム会社の技術者まで幅広い。合格者にはSlackを活用した情報交換コミュニティ「CFIT」への参加権も与えられ、講演会・勉強会といった継続学習の機会が提供されている。

 今回は2024年9月〜2025年3月までに実施された初年度試験の成績上位者が表彰対象となり、「金融IT検定 初級」試験(全60問・300点満点)の中で特に優秀なスコアを収めた受験者が壇上へと招かれた。

 
さらに、森田 由起子氏(金融IT協会(FITA) 理事、あおぞら銀行 執行役員(オペレーションズグループ担当))が登壇し祝辞を述べた。森田氏自身も本検定を受験・合格した経験があり、「単に合格を目指すだけでなく、学びを通して好奇心を刺激される素晴らしい仕組み」と検定の意義を強調。2025年度からは奨励資格制度として、合格者に報奨金を支給する制度も導入されたことが紹介された。


(取材、撮影、記事、編集・制作 : GoodWayメディアプロモーション事業部 @株式会社グッドウェイ )










09:12 | 取材:金融・IT業界向け
2025/05/13

【ギックス】データインフォームド経営の社会実装推進を目的に「GiXoデータインフォームド・サミット2025」を開催!

| by:ウェブ管理者

 2025年4月22日(火)、データインフォームド推進企業のギックス(GiXo)は、昨年の初開催に続いて第2回目となる「GiXoデータインフォームド・サミット2025」を東京ミッドタウンで開催した。

 “データインフォームド”とは経験、勘、度胸などを踏まえた人間の判断を、データを用いることにより従来よりも論理的かつ合理的なものにアップグレードするという行動様式で、
ギックスはデータインフォームド推進企業としてアナリティクスを活用し、あらゆる判断をデータに基づいて行えるように支援することで、クライアント企業の経営課題解決を実現している。

Opening 


 冒頭の開会挨拶で網野 知博氏(
ギックス 代表取締役CEO)は、「あらゆる判断を、Data-Informedに。」というパーパスを掲げる当社が、日頃どのような思いで事業を運営・推進しているかといった事例を共有できればと述べた後、東証マザーズ(現 東証グロース)上場から3年が経過し、マネジメント体制も一部変更したことなど自社の取組みを紹介。「顧客理解No.1カンパニー」を目指す企業として、戦略コンサルティング、データ・サイエンス(アナリティクス)、データ・エンジニアリング(システム開発)、プロダクト開発という4つのケイパビリティを活かしながら、クライアント企業の成長を支えていきたいとして、そのサービス概要や戦略等を共有し、最後にアジェンダやブースの紹介を行って開会挨拶とした。

基調講演 第3のエアラインという新しい翼の生み出し方・育て方


 峯口 秀喜氏(
エアージャパン 代表取締役社長)は大都市圏から地方への顧客回遊を促し、地域をより豊かにすることを目的とした、ANAグループとしての取り組み背景を紹介した。その上で、自社が掲げる「第3のエアライン」としての立ち位置について、インバウンド向けの地方連携による訪日観光体験の設計、SNS活用、ギックスが支援するレベニューマネジメントの事例なども交えながら、戦略の具体像を共有した。

講演 津南町における地方創生”津南創生”


 桑原 悠氏(新潟県中魚沼郡津南町 町長)は、ギックスと地域活性化推進パートナーシップを締結している自治体として、「人口減少にあわせたまちづくり」について講演した。既存事業の見直しに加えて、地域資源を活かした民間企業との連携事例として、エアージャパン航空機内での津南町紹介動画放映や物販の取り扱い、ご当地ロボホンによる観光施策、ギックスのMygru(マイグル)を活用したデジタルスタンプラリーでの地域回遊促進とデータ活用などを紹介。自前主義に捉われず、外部と連携していくことの重要性を語った。

パネルディスカッション地方創生に寄与するデータインフォームドとは


<パネリスト>
峯口 秀喜氏(エアージャパン 代表取締役社長)
桑原 悠氏新潟県津南町 町長
<モデレーター>
網野 知博氏ギックス 代表取締役CEO

 パネルでは、スモールステップで早期に小さな成功体験を積み重ねていくことが、未来へのモチベーション醸成や関係者からの信頼獲得につながる、という認識を共有した。その上で津南町では、町の観光課・地域住民・ギックスが連携し、スタンプラリーで得た観光回遊データをもとに仮説を立て、次のアクションへと繋げた事例を紹介。こうしたサイクルの継続こそが、持続可能な地方創生の体制づくりに繋がる、という議論が交わされた。

講演 右脳 × 左脳 × 異能による共創型データプラットフォーム事業とは


 杉本 将隆氏(電通コンサルティング 専務執行役員/シニアパートナー)は、技術の進化がこれまでトレードオフの関係であった顧客リーチと提案品質の両立を可能にし、複数の事業者が共同事業体でサービス提供することができるようになったと語った。その上で官民連携の共創型プラットフォーム事例として福井県で展開する「ふくアプリ」を紹介した。

パネルディスカッション 北海道ガスがデータで創る未来~情報プラットフォームXzilla(くじら)による新たな挑戦~


<パネリスト>
松澤 圭祐氏(
北海道ガス エネルギーサービス事業本部 設備技術サービス事業部 設備技術部 機器施工グループ)
山本 祐滋氏(BIPROGY パブリックサービス第一本部 北海道公共サービス一部)
ショーン・カー氏(ギックス DI変革Div.)
<モデレーター>
横田 賀恵氏(
BIPROGY 市場開発本部 データ&AI開発部 部長)

 パネルでは、まず松澤 圭祐氏が、北海道ガスにおける情報プラットフォーム「Xzilla(くじら)」の活用を通じて、業務プロセスの変革とお客様との関係強化を目指していることを紹介した。
続いて、Xzillaが扱う膨大なデータの全体像や基盤構築の経緯について、BIPROGYの山本 祐滋氏とともに振り返った。
さらに、ギックスのショーン・カー氏からは「データ活用のゴールは“文化醸成”である」との意見が提示され、社内課題、推進体制、人材、データ基盤といった「データ活用経営」に必要な要素について、多角的な意見が交わされた。

パネルディスカッション 子育て支援スタンプラリーの成果と更なる他自治体への展開


佐藤 好浩氏(三井不動産 イノベーション推進本部 柏の葉街づくり推進部)
遠藤 朱寧氏(ギックス DI変革Div. )

 パネルでは、スマートシティの課題解決ポータルサイト「スマートライフパス」の運営事例として、Mygruを活用した子育て支援スタンプラリーの取り組みが紹介された。
この施策は千葉県柏市と兵庫県神戸市において、それぞれの地域課題や目的に応じて官民連携で展開され、子育てに関する支援拠点・施設・イベントの周知や、子育て世代同士の交流促進にもつながった。
また、復職支援など子育て世代に向けた新たな支援の可能性についても、今後の展望として語られた。


講演JR西日本におけるシステムモダナイゼーションの取り組み


 小山 秀一氏(西日本旅客鉄道 デジタルソリューション本部 システムマネジメント部 担当部長)は、システムモダナイゼーションの取り組みの端緒として、自社のデジタル戦略におけるシステム部門の役割を整理し、モダナイズや開発内製化の価値を納期・品質・コストの観点から定義してきた経緯を紹介した。
その上で、「堅く作って長く使う」従来の手法ではなく、「新しい技術で改善し続ける」アプローチに転換し、クラウド上で再構築したICOCAポイント管理システムの刷新プロジェクト事例を取り上げた。


パネルディスカッションシステムモダナイゼーションに実際に取り組んでの裏話



小山 秀一氏(西日本旅客鉄道 デジタルソリューション本部 システムマネジメント部 担当部長)
岡 大勝氏(ギックス 上級執行役員/Chief Technologist & Chief Architect)

パネルでは、小山氏が前段の講演で紹介したICOCAポイント管理システム刷新プロジェクトについて、推進当初に直面した現場の声や、組織・人材のマインドに関する課題を振り返りった。それを受けてプロジェクトを支援した岡氏が、メンバーに伝えたシステムモダナイゼーションの2つのメリットである「変化への適応力」と「コスト競争力」について解説。さらに、システム開発・運用を担う企業や人々が持つべき心構え等についても語った。

パネルディスカッション データインフォームドの本質~データへの向き合い方~


宇川 有人氏(co-PdM合同会社 代表)
花谷 慎太郎氏(ギックス 代表取締役COO)

サミットの締め括りとなる最後のパネルでは、消費者サービスにおけるデータ活用とは「心地よい接客を提供する手段」である、という宇川氏の考えを起点に、データを取り扱う上での大切なマインドについて議論が交わされた。あわせてギックスのパーパスに掲げられている「データインフォームド」という考え方について「データドリブン」と比較しながら語った。

Closing 


 渡辺 真理氏(
ギックス 取締役/執行役員 経営基盤強化本部長)はデータを取り巻く技術・社会・ビジネス環境の変化を踏まえ、これからのデータ人材には、単なる分析や報告にとどまらず、データを活用して価値を創出し、意思決定を支える力が求められると述べた。
続いて、ギックスが掲げる4つのカルチャー「ラーニングアニマル」「高い好奇心」「合目的性」「やり遂げる姿勢」について触れ、これらをメンバーが共有しているからこそ実現している多様な組織のあり方を紹介し、閉会挨拶とした。


協賛ブース 

 休憩時間等、展示ブース会場は多くの人で賑わいを見せ、ブース会場から講演会場にブース紹介の中継も行われた。

 データインフォームドによる経営の革新を支援するギックスが主催する年に一度のイベントである「GiXoデータインフォームド・サミット2025」。今回は地方創生におけるデータ活用についても多くの実例が紹介された。企業・自治体等におけるデータ活用のムーブメントが加速する中、データ活用に成功した企業等のユースケースや課題解決のカギ、ヒントが得られる本コンファレンスが、データ活用による社会革新促進の意味からも次回も盛況となることを期待したい。

(取材、撮影、記事、編集・制作 :株式会社グッドウェイ@メディアプロモーション事業部 )



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19:26 | 取材:金融・IT業界向け
2025/04/01

【ACSiON/メルカリ】導入企業インタビュー「フィッシング詐欺対策を強化~ACSiON導入の背景と効果」

| by:ウェブ管理者


インターネットを利用した個人間取引が急増する中で、フィッシング詐欺の被害も増加の一途をたどっている。特に、フリマアプリなどのオンラインプラットフォームでは、不正アクセスや個人情報の詐取を目的としたフィッシングサイトが横行し、ユーザーの安全を脅かす大きな問題となっている。こうした状況を受け、国内最大級のフリマアプリ「メルカリ」は、ユーザーの取引環境をより安全に保つため、フィッシング詐欺対策の強化に乗り出した。

メルカリが導入を決定したのが、フィッシング詐欺対策の専門サービスを提供する「ACSiON」のソリューションだ。フィッシングサイトの検出とサイト閉鎖に向けた即時の対策を可能にするこのサービスは、すでに多くの企業で採用されており、その精度の高さと対応スピードの速さが評価されている。メルカリでは、フィッシング詐欺の被害が急増する中、既存の対策に加えてより強固なセキュリティ環境を構築することが急務となっていた。そこで、ACSiONの導入に踏み切り、より迅速な対応を可能にする体制を整えた。
今回、本サービスの導入を担当したメルカリの高橋氏に、その背景や導入の決め手、そして導入後の効果について詳しく話を伺った。


  急増するフィッシング詐欺、対応を迫られたメルカリ

2021年の秋ごろから、メルカリを装ったフィッシングサイトが急増し、ユーザーからの報告も相次ぐようになった。「1日あたり数十件、多い時には100件を超えるフィッシングサイトが確認される月もありました」と高橋氏は当時の状況を振り返る。

もともと自社でフィッシングサイトの自動検知システムを持ち、Google Safe Browsingへの通報も行っていたが、マイクロソフトのスマートスクリーンへの通報は手作業でしか対応できず、人的リソースの問題が大きな負担になっていた。また、フィッシングサイトの検知範囲を広げ、より迅速に対応する必要があると感じ、外部のフィッシング対策サービスの導入を検討することとなった。本来は、お客さま対応やフィッシング対策の強化にリソースを割くべきとの社内判断が外部サービスの導入を進める要因となった。


  ACSiONの導入と運用の実際

フィッシング詐欺の被害が拡大する中、検討から導入までを約1か月という短期間で進めることとなった。導入前には、検知のカバレッジや、通報後にどの程度のスピードでフィッシングサイトが遮断されるかが懸念点であったが、ACSiONの高い検知力と迅速な対応により、安心して運用を開始することができた。

フィッシング対策サービスを選定する際には、検知精度の高さと運用の柔軟性が重要なポイントとなる。特にメルカリでは日常業務でSlackを活用していることから、フィッシングサイト検知時の即時通知機能が必要不可欠であり、高橋氏は次のように説明する。

「お客さまからフィッシングサイトの報告が入る前に、いち早く発見して対応することが重要です。ACSiONからのSlack連携により、検知情報をリアルタイムで確認し、迅速な対応が可能になりました」
この早期検知により、フィッシングメールが広く拡散される前に対策を講じることが可能となった。


  進化し続けるフィッシング詐欺との戦い

フィッシング詐欺の特徴として、攻撃の波が数年周期で発生することが挙げられる。メルカリでは2021年から2022年にかけての攻撃を抑え込んだ後、2024年初頭に再び大きな波が到来した。この状況を受け、高橋氏は次のように警鐘を鳴らしている。

「2022年に効果のあった対策が、フィッシングサイトの進化により2024年には効かなくなってきているケースも見られます。攻撃者のPDCAサイクルが非常に早く、私たちも対策を進化させ続けなければならない状況です」

フィッシング詐欺対策では、一企業だけでなく業界全体での取り組みが重要となる。メルカリは日本サイバー犯罪対策センター(JC3)に参画し、他の企業や機関と積極的に情報交換を行っている。「フィッシング詐欺を行う側は、日本の各サービスやブランドを垣根なく狙ってきます。例えば、特定の企業を狙っていたフィッシングサイトが突然別の企業に標的を移すようなケースも少なくありません。そのため、サービス提供者側も垣根を越えて情報を共有し、共に戦っていく必要があります」と高橋氏は強調する。

特に興味深いのは、フィッシングサイトから得られる情報の分析だ。日々検知されるフィッシングサイトに付随するIPアドレスやドメイン名などの情報を分析することで、攻撃グループの数や手口の特徴を把握できるようになった。例えば、同様の手口を用いるグループが複数存在することや、それぞれのグループが異なる手法でフィッシングサイトを展開している実態なども見えてきたという。こうした深い分析が可能になったことは、単なるフィッシングサイトの遮断以上の価値をもたらしている。


 新たな技術と啓発活動の推進

ACSiONの導入による効果は、フィッシングサイトの早期発見にとどまらない。2024年初頭に再びフィッシングサイトが急増した際も、ACSiONの検知システムによりいち早く状況を把握することができた。高橋氏は「お客さまからフィッシングサイトの報告が入ってからでは対応が遅くなってしまう。フィッシングサイトが立ち上がった時点で、メールが拡散される前に発見できることが重要」と指摘する。

検知されたフィッシングサイトのGoogle Safe Browsingによるブロック効果も確認されており、ユーザーをフィッシングサイトから直接的に保護することにも貢献している。また、運用負荷の軽減により、他のセキュリティ対策にリソースを振り向けることが可能になった点も導入効果の1つといえる。


  今後の展望と課題

今後も最新の脅威に対応しながら、ユーザーの安全を守るための取り組みを続けていくというメルカリ。フィッシング詐欺対策の最前線で、テクノロジーと啓発活動の両面から、より安全な取引環境の実現を目指している。

今後の課題として、検知からフィッシングサイトの遮断までのスピード向上が挙げられる。現状では、フィッシングサイトを検知しても、一部のサイトには依然としてアクセス可能な状態が続くケースがある。「検知してから即座にブロックされ、お客さまが一切フィッシングサイトにアクセスできなくなるような世界の実現を目指しています」と高橋氏は今後の展望を語る。

また、導入時に高く評価されたACSiONのサポート体制は、今後のシステム改修や運用変更の際にも重要な役割を果たすことが期待されている。フィッシング詐欺の手口が日々進化する中、柔軟な対応と継続的な改善が不可欠だ。

高橋氏はフィッシング検知サービスの今後について「検知からブロックまでの一連のプロセスがさらに効率化され、より多くの不正サイトが早期に無効化されることで、ユーザーの安全がより確実に守られる環境の実現を期待したい」と語っている。

(取材、記事、編集・制作 : GoodWayメディアプロモーション事業部 @株式会社グッドウェイ )





10:00 | 取材:金融・IT業界向け
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